「殿(しんがり)は任された」

その力強い言葉とともに、男は背を向けた。





二年前からいがみ合っていた和国と隣国・孫はついに刃を交えることになった。


幾度の小競り合いをして、双方の戦力を測った上で、互いに

「これが運命を握る一大決戦となろう」

と予測された大合戦がここに行われたのである。



その勢力図は・・・・・



和国軍勢600に対して、孫の軍勢は優に2000超。



数から言えば、必敗の様相を呈していた和国軍だが、退くわけにはいかなかった。



戦争においては「士気」というものが非常に重要になる。



戦力という概念は通常、武器の性能と武器の貯蔵量の合算によって計算される。



しかし、それは現場でなく、会議室で話し合った、現実性に欠いた概念としかいいようがない。

実際の現場、つまり戦場という「地獄」にはもう一つの魔の要因が人知れず追加される。


しかも、合算ではなく乗法によって。それが士気である。


つまり、戦力という概念の正しい計算方法は


戦力=武器の性能+武器の貯蔵量


ではなく、


戦力=(武器の性能+武器の貯蔵量)×士気

である。


おそらくこの士気という観点から語れば、古代から現代までの戦争全てを語ることができよう。


それほどの一大要因。





したがって、一大決戦と誰もが理解しうる、この決戦において「自軍が勝負を避けた」と聞けば、内部崩壊は不可避。


やむを得ず、和国軍は大将の号令に従って、突撃した。









「ぐはあああああーーーーっっ」



ドサリ。



また一人倒れていく。




予想していたことではあるが、和国の被害は燦々たるものだった。


あまりの兵力差に和国は惨敗を喫した―いや、それは正しい表現ではない―。


和国は惨敗を―




「退却、退却だ―!!!!!!!敵が追ってくるぞ!!」




喫する、直前なのだ―――!!!!



そう、まだ負けてはいない。



この戦いによってかなりの被害を被ったが、和国とてみすみすやられにいくほど馬鹿ではない。


あらかじめ負けることを想定しておき、この戦いにおいて最低限入手すべきものを事前に考えていた。それは―



相手の大将、中に君臨する武将たちの戦力のデータ。


相手の戦略家の思考パターン。


兵が現場においていかほどの動きをするか、その練習量の推察。


つまり、総力戦によって垣間見える相手の「真の戦力」を見極めんがため。


たかが情報。


だが、その“たかが情報”のために和国は命を懸ける―。




この決戦において敵に背を向けての退却など、もとより承知。


退却など敗北のうちに入らん。




合戦において勝敗の決し方は一つ。


どちらかが全滅することだ。


そのゆえに、全滅しなければ、敗北ではない。


もうデータは取った!次の合戦で目にもの見せてくれるわ!!




そう意気込んで復讐を誓う和国は、ひたすら―逃げる。



何から?



そう、孫軍だ。



孫軍とて、馬鹿ではない。ここで全滅させなければ、自分の喉下にいずれ刃をつきつけられることを理解している。


どんな小さな芽でも、たとえ残り120の矮小軍勢だとしても、ここで止めなければ―!


次は、俺が、―やられる―!!!






逃げる和国。追う孫軍。



縮まらないように思えたその距離もやはり、体力の余り具合でも優勢であった孫軍によってどんどん縮められていた。





(続く)


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