俺が所属しているサークルが発刊している雑誌の中で俺は連載をやっている。


今回は今月号の連載を転載してみた。


ではどうぞ↓





「限界のその先を」




私は昔「ごぼう」のようにやせ細っていた。

一般的に「成長期」と言われる中学時代も体つきはよくならず、高校入学時でも私の体は175cmの身長ながら、体重は52kgという激痩せの身体だった。


それから三年後。卒業の時、私は177cm、72kgになっていた。


3年間で20kgの増量。

これは全て筋力トレーニングによるものだった。どれくらい筋力が上がったかを示す指標として、ベンチプレスという筋力トレーニングの数字の変化が挙げられる。

ベンチプレスとはベンチに寝そべって重りを上げる、みんながよく見る代表的な筋力トレーニングだ。

筋力トレーニングを始めた最初の頃、私が持ち上げることができた重量はたったの45kgだった。


「まあ、こんなもんだよな・・・」


最初から期待はしていなかったものの、相も変わらず非力な自分に嫌気が差した。それでも私は筋力トレーニングを続けた。いつの日か隆々とした肉体になることを夢見て。

それから三年後の高校卒業時。


私のベンチプレスのMAXは103kg、と学年でもトップを争うパワーを持つようになっていた。



■「戦う」より「逃げる」




「ちょっと、忙しいんで・・・」

「自分にはできそうにないんで・・・」

「自分、○○苦手なんで・・・」

仕事を頼まれるとこのようにして断る人々がいる。

このような言葉を聞いていると、この人はいつまで逃げるのだろうか?とたまに疑問に思ってしまう。

もちろん、本当に物理的に時間もなく、「自分がこれ以上仕事を抱え込むと、パンクして周りに甚大な被害を与える」と予想した上で、積極的にかつ堂々と「頼みごとを受諾できない」と述べるのならば、それはいい。

だが果たしてそういう言葉を吐いている学生の何割が本当にそれほどキツイ状態であるのだろうか。

私にはそれが疑問に思えてならない。

私自身も結構適当なことを言って逃げた経験が昔はあった。

今でもあるかもしれない。

その昔の私を自己分析してみても、やはり上記のような言葉を吐くときは大してキツい状態ではなかったし、そもそも自分自身の仕事の出来如何が周りに影響するなどという客観的な視点を持ったことすらなかった。

そういう言葉を吐いているときは大抵「逃げ」であることが多かった。

時間も体力もあるのに、一歩踏み出す勇気が無かったのだ。


スピーチは苦手だから嫌。スケジュールきつきつにしたらキツイから嫌。こんな仕事は無理。

どれもこれも「逃げ」でしかない。このままでは成長するわけがない。

「別にそんなガツガツ成長しなくてもいいじゃん。平凡であればいいと思うよ」

・・・・・果たしてそうか?

■「今のうちに向き合っておきな」

今年の夏にFUNの一代前のOB・OG、すなわち今年の四月から新入社員として働いている先輩が帰省してきて、FUNのゼミ(土曜の9:00〜12:00にやっている)を見学しに来たことがあった。

私は浪人しているので一学年違いではあるけれども彼・彼女らとは実質同い年だ。

「懐かしいものだ」と感慨にふけりながらも、彼らを見ていたら何かが違うことに気づいた。

最初のうちはわからなかったが、ゼミが終わり、午後ゆっくりとお互いに近況を話していると、その違いがわかった。

それは「重厚さ」とでもいえる雰囲気である。学生時代にはいい意味でみんなエネルギッシュだった。しかし、重厚さというか、そのどっしりと構えた心の落ち着きが加わっていた。冷静でありながら情熱的であり、情熱的でありながら冷静だった。

話し方から仕草にいたるまで学生時代にあったある種の「ノリ」というものが薄れていた。

学生時代からよく学び、小さなことにも感謝と感動を忘れず、それを糧に毎日輝く学生生活を送っていた彼らは社会で様々に鍛えられ、いい顔つきになっていた。


そんな雰囲気をその場に居合わせた後輩たちはひしひしと感じ、昔とは違う「静かなる熱意」というものを、先輩たちから確かに受け取っていた。


そんな雰囲気の中、ある先輩が言った言葉が印象に残っている。



「みんなは今、自分の弱点とかあるかな?素直にそれと向き合ってられてるかな?」



唐突な質問であった。

彼女はベンチャー企業に就職していたが、話には厳しいアドバイスを先輩からもらいつつも、日夜仕事に励んでいるとのこと。

大学内で最後に会った時よりか幾分か痩せていた。恐らくハードなスケジュールとハードな仕事内容でそうなったのだろう。彼女は言う。

「今、私はベンチャー企業で働いていますが、毎日指導されっぱなしです(笑)

ここでは自分が今まで苦手としていて、逃げてきたことを全て指摘されます。

ええ、それは一つ残らず(笑)

仕事が遅いだの、

計画性が無いだの、

私が逃げてきたこと、

つまり『自分にはこういうダメなとこあるけど・・・・まあいいかな』と直そうともしなかった欠点の全てをつつかれ、改善するまで見逃してもらえません。

それは本当にキツイです。


こんなことなら学生時代から少しづつでも直しておけばよかった・・・。そう後悔する毎日です。


今、みなさんは自分のダメなところとか弱いところとかが何かしら見えていると思います。


そこで逃げないでほしい。


素直に向き合って学生時代に少しでも改善しようとしてほしい。私のように、社会人になってから怒涛のように押し寄せたら本当にキツイですよ」

この言葉はその場にいた大学生の心に、矢のように深く突き刺さった。責任を持った行動と確かな実力、人間性が求められる実社会で日夜精力を尽くして働いている彼女の言葉はそこにいたどの大学生の言葉よりも重かった。

■常に成長を望むなら、常に限界を超えた努力を

実社会で、烏合の衆に呑まれず、確固たる信念と実力のもとに裏打ちされた仕事を完遂する社会人になるためには常に成長を望むことが要求される。逆に、成長する気力がないならば、一生人によって使われるだけの人間になってしまうだろう。

現状維持はすなわち、衰退である。成長せよ、学生。

ここで冒頭に挙げた筋力トレーニングの話に戻る。私はなぜ103kgまで重量を上げることができたのか。この経験を考察することで、成長に必要なことというものが露になってくる。

そもそも筋肉量というのはなぜ多くなっていくのか。それには「超回復」という現象が深く関わっている。
超回復とは、筋力トレーニング後に24〜48時間くらいの休息をとることによって起こる現象で、休息の間に筋肉量がトレーニング前よりも増加する現象のことだ。

超回復を起こすにはどうするか。それは筋肉の破壊と修復を繰り返すことで達成される。つまり、筋力トレーニングを行うことによって筋肉が破壊され、それから「24〜48時間」かけて徐々に修復される。

この「破壊」が特に大事なのである。たとえば、自分の持ち上げられる最大重量が50kgだった時に、40kgの重りを少し上げただけでは筋肉量は絶対に増えない。そのような人間が筋量を増やすためには50kg以上の重量で何回かやるか、それともそれ以下の重量で腕が上がらなくなるまでやる。そうしなければ、筋量は現状を維持するだけで、成長はしない。

その点、私は筋トレをする度にMAXより重いものを上げようとすることを怠らなかった。昨日は60kg上がったから、62kg、その次は63kg・・・と小さな小さな「限界を超えようとする努力」を怠ったことはなかった。

成長は、常に自分の限界と向き合い、それを超えようとする努力をして始めて達成できるものである。

実生活も同じ。

「いやだ」「できない」「無理だ」「苦手なんで」と言って逃げ、「今の自分」でできる範囲でしか仕事をせずに満足しているような人間が成長などできるものか。

自分の欠点や弱点を苦しみながらも素直に認め、その欠点や弱点を「限界」と認識して、その限界を押し広げる努力をしない人間が社会に出て役立つものか。

「これ以上やったら、スケジュール的に無理かな」と思った時、それがすなわち自分の限界値を算出した時である。「無理かな」と思った瞬間こそ「トレーニングの始まり」なのだ。

第一、学生時代の能力程度で社会に通用するなら、誰も苦労はしない。

実際の社会はそうではなく、現時点での能力のまま、または「苦手なこと、大きな障害に出会った時にはすぐ逃げる性格」のまま、社会に出て、毎日泣いているものが多い。
あなたは、毎日泣きたいか?

「パンクするのが怖い。周りの人に迷惑がかかるから」そういう意見もあるだろう。周りを気遣うことはいいことだ。しかし、学生時代にかける迷惑などたかが知れている。大学時代に頑張って失敗して、周りに迷惑をかけたことで罰されることがあるだろうか。友達から絶交されることはあるだろうか。莫大な賠償金を求められることなどあるだろうか。

大学時代の失敗というものに大きな責任を負うことは少ない。

それが俗に言う「モラトリアム(猶予期間)」というものではないだろうか。

「多少の失敗は許してやるから、自分自身の限界を押し広げて、将来社会に大きな貢献をするような人間に育ってくれ」

という愛情に支えられて創立され、運営されてきたのが大学である。

ここで失敗を怖がったり、怠惰な気持ちで自分自身の限界から目を背けていては大学生とはいえないだろう。

今自分がやろうとしていることは人それぞれあるだろうが、なんでもいい。それを行う中で見えてきた自分自身の限界をもっと押し広げよう。

そして、何よりも「自分自身の欠点や弱点に出会った時に、そこから逃げ出さないような性格」になろう。このような性格になれば、就活だろうが、学生生活だろうが、アルバイトだろうが、全部うまくいく。

今「失敗が許される」期間にいること、周りの人は愛情を持ってそれを見守ってくれていることを理解して、大いに努力しよう。

学年など関係ない。全ての大学生に告ぐ。

現状維持ではなく、成長を望め。常に先を見よ。君の限界の、その先を。




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